ワークショップ報告「UXデザイン実践ワークショップ プラグマティックペルソナとマイクロカスタマージャーニーを作ろう」
2019年09月11日 更新 | タグ: 技術情報
2019年9月7日、株式会社ツルカメの代表取締役兼UXディレクタの森田雄さんを時代工房のオフィスにお迎えして「UXデザイン実践ワークショップ プラグマティックペルソナとマイクロカスタマージャーニーを作ろう」を開催しました。参加者数10名で、30分ほどの座学ののち、2つのグループに分かれて、ワークショップを行いました。以下、その簡易なレポートです。
なお、ワークショップ後、ペルソナ理解が深まったので、そのメモも残しておきます(「UXデザイン実践ワークショップ プラグマティックペルソナとマイクロカスタマージャーニーを作ろう」を受けて、弊社の「ペルソナ理解」が改められたのでレポート)
目次
レポート「UXデザイン実践ワークショップ プラグマティックペルソナとマイクロカスタマージャーニーを作ろう」
ペルソナについての簡単な座学(10分程度)
ペルソナの定義
- 「ユーザ像」のこと
- ターゲットユーザとは違う。ターゲットユーザはいわば「理想的なペルソナ」
納品型ペルソナ
- ペルソナ屋さんが提案してくれるペルソナ
- 使われることなく、ひっそりと机の引き出しに眠るペルソナがたくさんいるらしい
ペルソナを作る目的
- 各人がそれぞれ思い描くユーザ像で制作を進めていくと、けっきょく、各人の嗜好で制作が進んでしまう。制作関係者全員が同じ目標に進んでいくことができない状況ができる
- ペルソナをつくることで、「こういうペルソナだったら、どう振る舞うか」という「ユーザ主体の視座」を獲得しやすくなる
自分たちで作るペルソナ
- 本格的なペルソナを作るのには金も時間もかかるが、それほどお金と時間をかけなくても、実用に耐えるペルソナ(プラグマティックペルソナ)を作ることは可能
- クライアントと一緒に自分たちで作るので、納得しやすく、設定を忘れにくい
- クライアントがいても、この方法が簡易な手法であるため、実態と乖離しているかもしれないが、ベンチマークになるので、修正していけば良い
- 作るプロセスで、「自分たちはターゲットについて、そもそも理解できているのか」という根本的な見直しもできる(結果、サービスそのものを整理する契機にもなる)
ワークショップの流れ
我々の設定
- 今回の我々の設定は、旅行情報を提供するウェブを作ること
- 我々の作るサイトを利用して、旅行の意思決定をして、旅行に行ってもらうのが目的
「デモグラフィック(デモグラ)」を作る
- 性別、年齢、名前、職業等、ペルソナの属性にあたる基本的な情報を用意する
- ほとんどの場合、クライアントがだいたいわかっているはず
- 今回のワークショップでは「32歳独身女性、北海道出身で京都市在住、広告代理店勤務、年収550万、ITに明るい 伊藤亜矢さん」
「インサイトマップ」を作る
- ペルソナの
- 能動的に摂取している情報
- 受動的に入ってくる情報
- 普段の思考
- 普段の行為
- デモグラから想像される人物の興味、関心、周辺状況をリアルに想像していく
- どんなテレビ番組を見ているのか、どんな雑誌を読んでいるのか、会社でどんな話を聞くのか、普段何を考えているのか……そういったことを付箋に書いてペタペタ貼っていく
- 客体視するためのファシリテータ必須(今回は森田さん)
- 8人くらいでやったほうがよい。少なすぎるとけっこうネタに詰まる
インサイトマップの簡易検証とgain、painの把握
- みなおもいおもいの32歳独身女性を言いたい放題なので、「外食が好き」「弁当派」みたいな矛盾した項目ができてしまう。このあたりの矛盾を話し合いで解消する
- この話し合いのプロセスでも、ペルソナへの理解が深まっていく
- またここで、我々の目的(旅行サイトに来てもらって、旅行に行ってもらう)に即した観点からgain(プラスに働く要素)、pain(マイナスに働く要素)を抽出する
- 今回は1時間程度でやりましたが、本来は1体につき3時間以上かけてやるそうです
「マイクロカスタマージャーニー」の作成
- 矛盾点を解消しても、まだペルソナの妥当性には疑いがあります
- たとえば「想定される収入と日々の活動は釣り合っているのか」「たいへん旺盛に情報取得しているようだが、そんな時間のある人物なのか」などです
- これを検証できるのがマイクロカスタマージャーニーです
- インサイトマップをもとに、ある1日の起床から就寝までの活動を追っていきます。1日ができたら平日や週末といったバリエーションを組んでいきます
- 今回のワークショップでは、1日の起床から就寝までをつくるので時間切れでした。またインサイトマップ作成と同日にやることはせず、何日かあけて、インサイトマップが自分たちの中でおちついてきてからやるものだそうです
成果発表
お互いのチームが作成したインサイトマップとマイクロカスタマージャーニーを見せ合いました。
片方のチームは、(森田さんのファシリテーションがあったにも関わらず)つい、ネタに走ってしまって、使いづらいペルソナになってしまったのですが、両チーム共、エッセンスは理解できたと思います。
興味、思考、環境、行動の4つの側面を考えるというペルソナを作る上での手法(インサイトマップ)とその検証の手法(マイクロカスタマージャーニー)を学ぶことで、
- クライアントやチームが合意形成していく上で、ペルソナが果たす役割の重要性
- 本格的なペルソナでなくても、プラグマティックペルソナがかなりの仕事をしてくれること
- もっというと、皆で作るプラグマティックペルソナであることで、お蔵入りになってしまうかもしれない本格的なペルソナよりも役立つ場面もありそうなこと
を学ぶことができました。
森田さん、ありがとうございました。