全盲視覚障害者のボルダリング体験レポート (Webじゃないアクセシビリティ Advent Calendar 2018)
2018年12月24日 更新 | タグ: アクセシビリティ, その他
Webじゃないアクセシビリティ Advent Calendar 2018の12月24日を担当させていただきます、有限会社時代工房の柴田です。
晴眼者に比べると視覚障害者の娯楽は数が限られています。カラオケなんかは、わりと晴眼者と視覚障害者が一緒になって楽しめる娯楽(参考:視覚障害とiPhoneとカラオケと。)なのですが、今回は、全盲視覚障害者の小寺さんと「ボルダリング(Wikipedia)」に挑戦してみました。
パラクライミングには視覚障害者カテゴリがあり、視覚障害者のこういった壁登りスポーツについても、この数年、ぼちぼちと耳にするようになってきましたが、まだとてもメジャーな遊びとは言えません。というわけで、「そもそも楽しめるのか」といった興味から、今回のはこびとなりました。
場所は京都千本北大路「クライミングクラブmilnorte」さん。本当は、まえもって予約しないといけないらしいのだけれど、たまたま空いていたので、「体験コース」をお願いできました。
「弱視の人は来たことがあるけど、全盲の方は初めて」とのことですが、たいへん丁寧にレクチャーしてくださいました。以下、レクチャーの様子の動画です。
講師の方が、頻繁に「身体のどの部位をどちらに動かすのか」を指示してくださっているのがわかると思います。ので、晴眼者と一緒に行くのであれば、まず、こういった楽しみ方はできそうです。
以下、いくらか写真です。
ボルダリング用のシューズに履き替えます。かなりキツいサイズ感であるべきものだそうで、足袋よりもキツい感じ。
写真は垂直の壁。逆勾配の壁もある。壁には手がかりである「ホールド」がたくさんつけられている。各ホールドの付近には、「あ」「い」「う」といった、印がつけてあり、「あ」のコースは、「Sあ」からいくつかの「あ」を手がかりにして、「Gあ」をめざします。
視覚障害のあるボルダリング経験者から聞くところによると、視覚障害者のボルダリングの楽しみ方の一つは、「登攀でなく横移動」との意見もあったらしいのですが、小寺さんは「せっかくなので上に登りたい」ということでした(ちなみに後に横移動も経験しますが、これはこれでかなり大変でした)。
指示を受けながら登っていく小寺さん。手前の柴田は、立っているだけです。
ゴールに片手が届いた小寺さん。両手でホールドを3秒程度掴んでゴールです。
逆勾配にも挑戦。
「腕の力で全体重を支えようとすると疲れてしまうので、腕は伸びている方がよい」という指導を受ける小寺さん。
「いちど一切の指図を受けずに登ってみたい」とのことで自力登攀。ただし「『あ』のホールドのみ」といったルールは難しいので、自由なホールドを選んで登っていく。
小寺さんのコメント
ボルダリング、やってみることができてよかったです。
視覚障害者には、次につかまる目標の手がかりが見えない、ということがバリアではあると思います。
今回は師匠のガイド、指示によってそのバリアを乗り越えることが、ある程度はできました。
ほかに方法はないか、は、今後、研究の余地があると思います。
指示なしで好きなようにやる場合、手がかりがたくさんある壁面が適していました。それはそれで楽しめました。
横移動もボルダリングをやってる感は十分でした。低い場所だと落ちても大丈夫という安心感がありました。
その一方で、上に登る魅力、爽快感とスリルは格別だと思います。
体をしっかり動かして、楽しく笑えるスポーツはいいなぁとあらためて思いました。
まとめ
というわけで、今回は小寺さんの腰巾着で柴田も壁に登ってきましたが、翌日、腕が上がらなくなりました。
ミルノルテさんはアポなしでお邪魔したにも関わらず、インターネットにあげてもいいよと許可をくださいまして、たいへん感謝しております。ミルノルテさんによれば、もし視覚障害のある方がおいでになるなら、人の少ない平日の方が、しっかりはりつけるので、視覚障害のある方にとっても楽しいとのことでした。土日は子供や愛好家でけっこう混み合うそうです。
電話:075-748-0202(平日13時から22時/土曜10時から22時/日祝10時から20時)
体験パックは大人2時間2,500円で事前の予約が必要です。
では、明日はmotchieさんの「まとめ」ですね。良いお年を。