メールとアクセシビリティ
2006年01月30日 更新 | タグ: アクセシビリティ
全盲視覚障害のかたを相手にする場合の注意が主です……が、そのほか多くの場合に通用するといえるでしょう。
「単語の泣き別れ」
メールソフトの機能などで、文章の見栄えをよくするために、物理的文字数で文章に改行を入れる、というのはよく見られますが、読み上げソフトでメールを読み上げているひとにとっては、意味を無視した改行というのは、かえって内容理解の妨げになります。
もとの文章
……というわけで、明日はすこし都合が悪いので、会議の前々日にお会いしましょう。
改行の例
……というわけで、明日はすこし都合が悪いので、会議の前(ここで改行) 々日にお会いしましょう。
また、メール文中で日程や場所を伝える際に以下のような表記をすることがあります。
……なお、開催要項は次の通りです。 場 所:京都駅 日 時:2004年9月09日 参加費:3000円
「場所」や「日時」は、多くの場合正しく読まれません。こういう場合は、たとえば次のような対処が考えられます。
……なお、開催要項は次の通りです。 場所 :京都駅 日時 :2004年9月09日 参加費:3000円
機種依存文字、文字化けに気をつける
メールの遣り取りでは基本的なことなのですが、丸付き数字やローマ数字など、つかっているコンピュータ環境が違うと、正しく表示されない可能性のある文字に気をつけましょう。自分のコンピュータでは正しく表示されていても、相手のコンピュータでは、わけの分からない文字に置き換えられたりします。
またなかなか気をつけようにも、努力の外で起こることもあり、悩ましいのが「文字化け」です。自分でできる対処として以下のようなことが考えられます。
- メール本文、件名などにいわゆる「半角カタカナ」を用いない
- メール本文、件名などに Unicode 文字を用いない
最近のメールソフトは「半角カタカナ」のせいで落ちてしまう、ということも少ないかと思いますが、いちおうメールの遣り取りでは御法度ということになっています。文字化けやメールソフトのクラッシュの原因になったりします。
Unicode の文字というのは、いわゆる「ハシゴ高」といわれるような文字がそれなのですが、旧来の文字コードとは異なった文字コードを持つ文字のことです。昔使えなかった文字が使える、ということでうれしいことはうれしいのですが、メール本文で使うのは危険なようです。よく文字化けの原因になっています。
だらだらと全文引用したりしない
音声読み上げというのは、視覚による情報取得と異なり、上から順にしか進みません。なので、全文引用した後にちょろっとコメントを書く……というようなやりかただと、たいへん非効率です。
また、メールソフトによる文字列引用というのは、上記「単語の泣き別れ」と同じく、機械的処理で改行をし、引用符をあてがうことが多いです。これも気が付いたらメールソフトに任せずに自分で改行するとよりよいでしょう。
ひらがなだけの文章がよいとは限らない
これは柴田が過去にやってしまったミスです。「あいては読み上げを使っているのだから、改行もなく、漢字も使わず、読んで欲しいとおりのひらがなだけにするといいだろう」と考え、メールを送りました。ところがどうも漢字によって読み上げの際の抑揚を作っているようで、これが全部ひらがなにしてしまうことで、かえって違和感のある文章になってしまうようです。
「どう読み上げられるのかな?」ということを少し考える
最後にかなりまとめ的なことを書くようですが、例として日付の表記について考えてみましょう。
よくやる日付の表記ですが、「2004/9/9」という書き方があります。これは晴眼者であれば一様に「2004年の9月9日だな」とわかりますが、読み上げだと「9分の2004の9」というような意味不明な読み方になります。つまり「分数」として読み上げてしまうわけです。ほかにもやや下品な例で申し訳ありませんが「FAQ」なんてひどい読み方をされます。
「ひらがなだけの文章がよいとは限らない」のところでもふれていますが、あまり過度に神経質になって文字の読まれ方を気にしすぎてしまうと、また読みにくい文章になってしまったりしますが、いろいろな場面で「ちょっと気に掛けてみる」とよいメールになるでしょう。